奈良駅近郊の重要文化財を巡る(2017年11月11日)   

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2018/06/11

奈良駅近郊の重要文化財を巡る(2017年11月11日)

九時過ぎに宿をチェックアウトする。近くのレンタルサイクル屋で一番安いママチャリを五〇〇円で借りて出発する。天気は曇。朝方まで雨が降っていたようでアスファルトが濡れていた。

奈良公園周辺に来たのは三年ぶり。昨夜は近鉄奈良駅から歩いて七、八分ほどの民家を改造したゲストハウスの四人用ドミトリーに泊まっていた。適度に空いていてなかなか良い所だった。共有スペースに古い地球の歩き方や旅行人ノートがたくさん置いてあった。オーナーがかなりの旅好きなのだろう。


転害門の太い柱

まず、東大寺の転害門へ。寺の北西の外れに位置しており、不便な場所にある。そのおかげか平安と戦国の戦火からも免れ東大寺で最も古い建物の一つだ。高さ一〇メートル、幅が十五メートル以上ありどっしりとしている。彫刻などの装飾は無く質実剛健な印象。寺域を囲う壁は既になく、単体で建っていて既に門としての役割は終えている。目の前にはバス停があり数人バス待ちしていた。自転車を停めて門の周りを歩いてから般若寺へ向かう。

コスモス寺とも呼ばれる般若寺
コスモス寺とも呼ばれる般若寺

般若寺の入口には特別展示の文字。毎年、奈良国立博物館で正倉院展を実施している期間は奈良のほとんどの寺で秘仏などの特別展示をしているようだ。運が良いともいえるがその分、入場料が高くなる。

入場料を支払い中へ。コスモス寺と呼ばれているようでコスモスが所々で咲いている。ただし、コスモス以外の植物も共存していてあまり綺麗ではなかった。入って目に入るのは一〇メートル以上の高さのある石塔。更にその先に本堂がある。本堂の中に唐櫃があり、太平記で有名な後醍醐天皇の息子、護良親王がこの寺で鎌倉幕府の追っ手に迫られた際に唐櫃に隠れて難を逃れたと説明が書いてあった。人が入るには手頃そうなものだがそれを見逃すとは幕府の追っ手も間抜けだな。本堂の裏に建物があり、特別展示として石塔の中に祀られていた小さな仏像がいくつか展示されていた。ちなみにここに入るのは別料金。いい商売だな。

帰ろうとした頃にツアー客がぞろぞろと入ってきて境内が騒々しくなる。こりゃあかんと早々に退散。

モダンな奈良少年刑務所の門
モダンな奈良少年刑務所の門

少年刑務所からホテルに改装予定のレンガ造りの元刑務所の近くを通り,
尼寺の興福院へ。中に入ろうとしたが扉が閉まっていたので断念。更に進んで不退寺に到着する。

不退寺の境内には植物が多く雑然とした印象。住居らしき建物の近くを通って本堂へ。本堂の内陣には在原業平縁の観音像と五明王像などが安置されている。お堂の中に何体もの仏像が並べて展示されているのは、博物館で展示されているよりも好きだ。

本堂を出て多宝塔へ。元々は2層だったようだが近世の修復で一階のみ残して上層は外してしまったそうだ。雑だなぁ。

海龍王寺にある小さな五重塔。小さいけど国宝
海龍王寺にある小さな五重塔。小さいけど国宝

次は海龍王寺だ。平城京の東端にあった光明皇后の父、藤原不比等の館の一角にあった寺が今も残っているそうだ。近所にある法華寺も元は藤原不比等の館の敷地だったそうだ。

ここで特別展示されていた十一面観音は昭和初期まで秘仏だったそうで保存状態が良い。一メートルほどの高さに優しい顔つき。鮮やかな金色に衣の細かい模様もはっきりと彩色が残っていて美しい。この日、様々な仏像を見たが一番好きになったのはこの仏像だ。

法華寺の本堂でも特別拝観で十一面観音を見ることができる。この像は光明皇后をモデルにしたそうだ。顔はふっくらとしていて、体に彩色はなく濃い茶色、長い右手が特徴的である。

法華寺にある光明皇后が困窮者に向けて造らせた浴室(からふろ)
法華寺にある光明皇后が困窮者に向けて造らせた浴室(からふろ)

本堂の奥にある慈光院に国宝の宗教画、絹本着色阿弥陀三尊および童子像が特別展示されていたが状態が悪く残念な印象。

太極殿はできて整備は進んだがやはり原っぱな平城京跡
太極殿はできて整備は進んだがやはり原っぱな平城京跡

法華寺から小さな社の宇奈多理座高御魂神社に立ち寄り、平城京跡に入る。一八年前に来たときは朱雀門しかなく、ただの原っぱという印象だったが大極殿や柵などができていてだいぶ整備が進んだなぁ。ただやっぱりほぼ原っぱだけど。

少し離れた秋篠寺へ。門をくぐり境内に入ると参道の左右には木々が茂り、地面には緑の苔が広がっている。

奥に進むと料金所があり金を払って中へ。大きな本堂の祭壇には一〇体以上の仏像が並べられていて見事だ。左右には背の高い伎芸天に帝釈天の立像。真ん中には本尊の薬師如来。その左右に日光菩薩、月光菩薩。その他十二神将などが置かれている。

秋篠寺の苔が広がる森
秋篠寺の苔が広がる森

途中からツアーの団体が入ってきたのでガイドの説明を聞いていたが日光菩薩、月光菩薩は最初に造られたときは彫られた装束から別の仏だった可能性が高いこと、伎芸天、帝釈天は頭部のみ奈良時代の作で体は鎌倉時代に作られたこと、これらも奈良時代に造られたときは別の仏だった可能性が高いということだった。気ままなのが好きなので普段ガイドは付けないのだが、こういう説明はあるといいな。

既に時間は一三時を回っている。一九時伊丹発の飛行機なので一六時半までには自転車を返却せねばならない。もっと色々なところを回る予定だったがあと数か所で時間切れになりそうだ。

奈良西大寺の本堂にあった精細な彫刻
奈良西大寺の本堂にあった精細な彫刻

南下して駅の近くを通って奈良西大寺へ。本堂で共通拝観券を購入して中へ。どうやら大阪のあべのハルカスや山口の博物館で西大寺展を実施しているようで相当数の仏像・文物が出張中だった。そういうことなら入場料値引きしてくれよ。

喜光寺の本堂
喜光寺の本堂

近くの八幡神社に立ち寄り更に南下して大仏造営の責任者だった僧、行基が没したという喜光寺へ。ここは入場料を入口ではなく一番奥の本坊で徴収している。金払わないで本堂だけ見て逃げる奴もいそうだ。本堂は背の高い堂々とした建物で東大寺大仏殿のプロトタイプとして建てられたと伝えられているそうだ。
内部には大きな阿弥陀如来、観世音菩薩、勢至菩薩の座像が安置されている。

伝香寺の地蔵菩薩立像
伝香寺の地蔵菩薩立像

ここから奈良駅方面に戻り、散り椿で有名な伝香寺に立ち寄る。境内には幼稚園があるが土曜なので誰もおらず静かだ。入場料を払うと係のおじさんが裸地蔵と呼ばれる地蔵菩薩立像が安置されたお堂の扉を開けてくれる。この像は衣が彫られておらず全裸とのこと、そのためオレンジ色の僧衣と黄色い袈裟を着せられている。脱いだら色々付いているのか気になるところだがまぁゲスいからあんまり考えるのは止めておくか。

最後に蓮長寺へ。ここの本堂には入ることはできないが、廊下の上の天井には大きな二人の天女が描かれていて見事だ。堂内には様々な宗教画が描かれているようだが確認することはできなかった。

蓮長寺本堂の天井の天女
蓮長寺本堂の天井の天女

自転車を返却し、宿に荷物を取りに戻る。時間はまだ一六時二〇分。JR奈良駅から一七時頃の大和路快速まで少し余裕があるがゆっくり歩くことにした。たくさんの外国人観光客とすれ違う。ここ数年は観光地に行くと外国人だらけだが今日訪問したところではほとんど外国人を見かけなかった。やはり皆、東大寺、興福寺、唐招提寺など世界遺産に指定されている有名な寺に行っているからだろう。

 JR奈良駅構内
JR奈良駅構内

それにしても入場料という強制お布施でだいぶむしり取られた。手持ちの札を見ると英世さんが二人しかいない。いつもそんなに現金は持ち歩いていないのだが数千円しかないなんて大学生の頃を思い出す。ただ、あの当時はクレジットカードやSuicaがなかったからやはり今の方が現金が無くても何とかなるのか。

奈良駅周辺にはまだまだ未訪問の寺が多く、奥深い。またいつか再訪する必要があるな。

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