朝の支度はいつも単調だ。顔を洗い、着替えて、広げた荷物をバックパックに戻す。ただ、今日はトレッキングをするので折りたたみ傘と懐中電灯を街歩き用のバッグに入れる。
ホテルの部屋にて
朝食は昨夜買った大きなパン。昨日の朝食時に持ってきたバターを使おうと思ったが落としたらしく味気のないものに。半分だけ食べて残りは小腹が空いたら食べられるように持って行こうと思ったがペロリと平らげてしまった。
起床してからここまで三〇分。宿に荷物を置かせてもらいチェックアウト。まずはツーリストインフォメーションに行く。事務所は開いていたが土日は休みなので担当者がいないらしい。地図や修道院の開いている時間の書いてある紙が置いてあったのでそれをもらう。そしてパン屋で昼食用のパンを買い準備完了。タクシーを探さねば。
カランバカからメテオラを臨む
広場にいれば見つかるだろうとウロウロしてみたが見つからず。電話で呼ぼうとしたがカード型の公衆電話しか見つからず使えない。これは困ったと思って少し先を見ると灰色のタクシーが何台も止まっている。何回も前を通っていたのに気付けなかったようだ。
料金交渉をするが九ユーロで決まっているとの一点張り。宿で聞いたとおりなのでまあいいかと交渉成立。上ること約一〇分で町から一番遠いメガロメテオロン修道院の前の駐車場に到着する。
岩山の上にあるメガロメテオロン修道院
ここからは各寺院を歩いて巡る。各寺院は岩の上にあり駐車場から急な階段を上らなければならない。
道は基本的に舗装されているか、遊歩道が整備されているので迷うことはないだろう。ただ、私は観光案内所の地図にあったアギオスステファノス修道院に繋がるrural roadを信じて歩いたら行き止まりで時間をロスして修道院が昼休みに入ってしまい中に入れなかった。このタイムロスがなければ入れたのに…急がば回れとはよく言ったものです。
メテオラからカランバカの町を臨む
六つある修道院のうち私は四つ中に入った。最初のメガロメテオロンは一四世紀以降に作られたイコンや装飾品が印象的であり、次のヴァルラーム修道院では壁一面に宗教画の描かれた教会が印象に残った。宗教画の背景は暗い色が多く重苦しい感じがした。
ヴァルラーム修道院
花とルサヌー修道院
これもルサヌー修道院。人がちっちゃい
三番目のルサヌー修道院は狭かったが教会の窓から入る斜めの光が作るコントラストが実にフォトジェニックだったのだが撮影禁止のため残念。そして最後に行った最もカランバカの町に近いアギアトリアダ修道院では急な階段とカランバカの町を一望した風景が記憶に残る。
ルサヌー修道院へ続く階段。この階段のあたりには猫が何匹もいた
ルサヌーからアギアトリアダへ向かう途中の道
古い時代のイコン(木に描かれた宗教画)の中でデッサンが酷くて絵がへたくそなものがいくつかあった。もしかして作成時に下手だから倉に入れて放っておいたものが後世発見され年代物だからありがたやと飾られたりしてるんじゃないかと思量。そうだとしたら面白いなあ。
信仰心とは時に狂気をはらむものだと思っていたがメテオラはその仮説を証明するに足る場所ではないだろうか。何もない岩の上に修道院を建てるにはまずロッククライミングをして頂上まで上り、下から大量の資材を持ち上げて組み上げる必要がある。岩から落ちて殉教した人もいるだろうし、労力もかなり必要だったはずだ。
こんな岩山の上に修道院を作るとは・・・
何かしらの理由があって山の上に建てることにしたのだろうが少なくともそれを実行するにはかなりの決心が必要であったろう。実際に実行するにはかなりの知力、体力、そして狂気が混じっていたとしか思えないのである。
メテオラ散策はギリシアに来て初めての楽しい思い出だった。ぜひお勧めしたい。
メテオラからカランバカへ戻る道にて
町に戻る道で濡れた道で滑ってカメラとレンズに傷を付けるという残念な出来事があったが、十一世紀に建てられたビザンツ様式の教会を見て、宿に戻ったのは一四時前。荷物をピックアップしバスターミナルへ。
カランバカのバスターミナル
チケット売場でデルフィに行きたいと伝えるとトリカラ経由でラミアに行けとのこと。そこからデルフィに行けるか確認したら大丈夫とのことだった。チケットを買い動き始めていたバスに待ってもらい乗り込んでトリカラヘ。トリカラでは四〇分待ってバスを乗り継ぐ。
バスはずっと平地を走っていたが坂道に入り標高を上げてゆく。一時間半でラミアに到着。デルフィまでのチケットを買うが今度は待ち時間二時間也。ギリシアのバスはホント乗り継ぎが悪いなあ。
ラミアのバスターミナル。待ち時間が長かった・・・
そしてようやくバスが発車。山道を走り更に高度を上げていく。いくつか町を経由して高度を少しずつ下げ夜の海沿いの町で降ろされる。終点まで乗っていたのはデルフィへ向かう旅行者十数名。乗り継ぎが悪いのと既に夜になっていてイライラしていたのか皆が運転手や係りのおばちゃんにデルフィにはどう行くのか質問していた。ここでバスを乗り換えればようやく到着するようだ。
バスを待つ旅行者たち
一〇分でバスが到着し旅行者が皆乗り込む。私は一番前の席に陣取る。サングラスをかけた髭の兄ちゃんが運転手だったが結構スピードを出すのに携帯電話でずっと片手運転。ギアチェンジはマニュアルなのでその都度ハンドルが留守になる。おいおい大丈夫なのかとはらはらしながら見ていた。電話が終わったと思ったら途中から乗ってきた姉ちゃんに乗車券の発行開始。まだまだ片手運転は続く。それも終わったので今度こそはと思ったらまた携帯電話で通話開始。細いくねくね曲がった道に入り、もう駄目かと思ったら肩で電話を挟んで通話したままではあったが、両手でハンドルを握り無事カーブを抜けた。
そしてカランバカを出発してから七時間。ようやくデルフィ到着。
恐怖のバスにて
目星をつけていたホテルは値段が合わず他の宿に行こうとしたが五ユーロ値引きの提示。予算オーバだったがもう二一時半を過ぎていて面倒だったので決めてしまった。部屋もダブルベッドとシングルベッドが一つずつ入った広々としたもの。夜入って朝早いうちにチェックアウトするのにもったいない。やはり夜着くとホテル探しが雑になるなあ。
今日は味気のないパンしか食べていない。ちゃんとしたものを採ろうと外へ。二二時を過ぎているがまだレストランには煌々と明かりが灯っていてたくさんの人が食事をしている。
旅行者向けの小綺麗なレストランは苦手なので清潔感はあるが内装がちょっと野暮ったい食堂へ入る。野菜と肉&ポテトフライのセットが七ユーロ。信じられないほどの量に驚き、苦しめられるが出されるものはおいしく頂くというポリシーを守り、なんとか完食。こんな時間にこれだけ食ったら太るじゃんと思うもギリシアからの挑戦に勝った気分。
この日の夕食。多かった・・・
ホテルに帰る途中にザーザーの雨が降り出した。ウィンドブレーカを頭からかぶり早足で戻る。明日天気が良ければいいのだけれど。
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